14-4. 情報高分子間の相互作用解析
https://gyazo.com/c46126ed3d416a19ff66aa9dd02da825
https://amzn.to/2I6DMZu
【A】タンパク質と核酸の相互作用の解析
1) in vitro反応による方法
ゲルシフトアッセイ
電気泳動移動度シフト解析(EMSA: electrophoresis mobility shift assay)ともいう
DNAとタンパク質を混ぜて通常(中性)ゲルで電気泳動すると、タンパク質結合DNAの電気泳動移動度がそのままのDNAの移動度より遅くなるという原理に基づく
ゲルを通過しても外れない、比較的安定な結合の検出に適している
目的タンパク質が正しく結合したDNAのみを検出でき(特異的な結合をすると、一定の分子形をとり、特定の電気泳動移動度をもつため)、感度もよい
RNAにも適用できる
https://gyazo.com/fbc1ca7320050ac5b8d1a9ceddd8b23f
フィルターを利用する方法
フィルター結合アッセイ
メンブランフィルターは単純な核酸よりタンパク質の結合した核酸を吸着しやすい
標識DNAとタンパク質を混ぜてからフィルターを通し、フィルターに残ったDNA量(標識量)を測定する
サウスウエスタン法
ウエスタンブロッティングの要領でタンパク質をフィルターに固定し、そこにRI標識したプローブDNAを作用させる
プローブDNAと結合するタンパク質があれば該当するタンパク質バンドの位置がオートラジオグラフィーでわかる
cDNAクローニングでは、目的DNA結合タンパク質を発現するファージの選択にも用いられる
フットプリント法
末端RI標識のDNAにタンパク質を結合させ、DNAが1ヶ所だけで切れる程度にゆるく切断し、それを変性ゲルで分離したオートラジオグラフィーで検出する
切断試薬としてDNase Iを使うDnase I フットプリントが一般的
末端からの距離に従ってバンドがはしご状に出現するが、タンパク質の結合した部分は切断されないためにバンドは出現せず、足跡をつけたように見えることからフットプリントとよばれる
他にDMS(ジメチル硫酸; Gで切断できる)やMPE(メチジウムプロピル-EDTA; 塩基非依存的にDNAを切断する)を使う方法などがある
https://gyazo.com/97973c4b5b9bde0c0ff3d07b116e643d
2) 細胞を使う方法
細胞内でのクロマチンDNAあるいはRNAとタンパク質の相互作用は、それぞれクロマチン免疫沈降法(ChIP)あるいはそのRNA版であるRNA免疫沈降法(RIP)で解析する
【B】タンパク質同士の相互作用の解析
1) 細胞を使う方法
ツーハイブリッドアッセイを使う
ハイブリッドタンパク質の一方(DNA結合領域、転写活性化領域のいずれでもよい)の融合タンパク質をcDNAライブラリー由来のものとすると、cDNA集団の中からあるタンパク質に対する結合タンパク質のcDNAを検索することもできる
結合タンパク質は転写を活性化し、マーカー遺伝子を発現させる
ツーハイブリッド選択
イメージングによって相互作用を解析することもできる
2) 細胞抽出液を使う方法
生理的環境に近い条件で結合を検出する方法に、免疫沈降(IP)後にウエスタンブロッティング(WB)するIP-WB法がある
IPは後述のChIPと同じ要領で行う
例としてAとBの結合を見る場合、まずAに対する抗体の結合したビーズでIPする
ビーズから外したタンパク質のSDS-PAGEを行い、その後Bに対する抗体でWBを行う
結合に別のタンパク質が介在する可能性もあるため直接結合と断定はできないが、AとBの生理的相互作用はわかる
https://gyazo.com/ac7b6ef43ae1e50ab9d4ba22d1712cc3
3) 結合能を有するタグが付いているタンパク質を使う方法
プルダウン法
人為的に作製したタグ付きタンパク質を高分子ビーズで引っ張り(pull)、溶出物質で洗い落とす(down)方法
GSTプルダウン法が一般的
GST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)タグの付いたタンパク質を用いる
目的タンパク質に対する抗体がなくても行うことができる
https://gyazo.com/1bca4e133d2bdd3110165cc8d32b7b15
原理
GSTがグルタチオン(GSH)と特異的に結合する性質を利用し、GST融合タンパク質と検定タンパク質を反応させ、複合体をGSH-ビーズに結合させる
その後GSHで複合体との結合を遮断して溶出し、検定タンパク質を検出する
タンパク質が純粋ならば、両者が直接結合すると結論づけられる
操作の概要とポイント
1) 遺伝子組換え操作でGST融合タンパク質Aを作製し、精製する
2) GST-タンパク質Aとタンパク質B(あるいはBを含む抽出液)を混ぜ、GSH-ビーズと反応させて結合させる
3) 洗浄後にGSHを流してA-B複合体をビーズから溶出させる
4) 溶出液をSDS-PAGEする
タンパク質がある程度純粋で量があれば、染色でタンパク質Bを検出できる
抗体があればWBでも検出できる
このほか
オリゴヒスチジン付きタンパク質とニッケル結合ビーズ(ニッケルがヒスチジンと結合する)を用いる方法
アビジンとビオチンカラムを用いる方法
4) ファーウエスタン法
ファーウエスタン法(ウエストウエスタン法)
ウエスタンブロッティングの要領(ただし未変性ゲルを使うことが多い)でフィルターにタンパク質を転写し、そこに結合を見たいタンパク質Aを作用させる
この場合Aをbait、Aと結合するフィルター上のタンパク質をpreyという
次にAに対する一次抗体、さらに二次抗体を作用させ、ウエスタンブロッティングでシグナルを検出する
5) 結合タンパク質を網羅的に検索するさまざまな方法
プロテインチップ法
基盤に多数のタンパク質を付け、そこに検定対象の標識タンパク質を付けて結合の有無を検出してタンパク質を同定する
ハイスループット検出法の一つ
ファージディスプレイ法
ファージ表面タンパク質遺伝子のcDNAを連結させた融合タンパク質を多数つくらせるファージディスプレイを行う
個々のファージをフィルターに固定し、そこに検定タンパク質を作用させ、結合を検出する
タンパク質検出とcDNA同定を同時に行うことができる
超遠心沈降法
タンパク質の沈殿しない遠心分離の条件でも、別のタンパク質が結合して複合体となる沈降することを利用する
アフィニティカラム法
タンパク質をカラムに固定し、被験タンパク質を通す
結合するものは素通り画分には現れない